会社の「らしさ」を形にする。視覚的に想いを伝える、VIの作り方

中小企業の経営者のみなさま、これまでの連載では、「デザイン経営」「ブランディング」 そして会社の設計図である「CI(コーポレート・アイデンティティ)」についてお伝えしてきました。
第5回となる今回は、CIを形作る3つの柱(MI、BI、VI)のうち、一目で想いを伝える「VI(ビジュアル・アイデンティティ)」について深掘りしていきます。
VIは、みなさんの代わりに24時間365日、言葉以上に想いを語ってくれる最強のパートナーになります。
明日からワクワクして取り組める「らしさを形にする方法」をお伝えします。
目次
1. VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは?
VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは、御社の想いや個性をロゴや色、フォントなどの視覚的な要素で形にし、お客様に御社のブランド価値や理念を一貫したイメージとして届けるための『視覚的な表現の仕組み』のことです。
【役割1】ひと目で「あの会社・あのブランドだ」と伝える
どれほど素晴らしい理念(想い)を持っていても、それが目に見えないままだと、お客様に気づいてもらうことができません。VIは、ロゴマークや色、使う文字の形などを統一することで、「あ、あの会社だ!」とお客様に一瞬で見つけてもらうための大切な目印になります。
VIとは、まさに他社の中に埋もれないための、御社だけの「独自の印」を明確にすることなのです。
【役割2】企業やブランドの世界観を視覚的に浸透させる
大切な商談に向かうとき、自分を一番輝かせてくれる「勝負服」を選ぶのではないでしょうか。それはお客様への「敬意」と、仕事への「自信」を形にするためではないでしょうか。
VI構築とは、いわば会社にとっての「最高の勝負服」を仕立てることです。出会った瞬間に、みなさんの情熱が伝わり、信頼の扉がスッと開く。そんな前向きなきっかけを作るのが、視覚(VI)の本当の役割だと考えます。
【役割3】企業やブランドの認知を高める
名刺、ホームページ、看板など、あらゆる場面で統一された印象を与えることで、記憶の定着を助けます。「いつものあの感じ」という安心感が繰り返されることで、忘れられない存在となり、長期的な信頼関係の土台を築きます。
この3つの役割が連動することで、VIは単なる「デザイン」を超えて、経営の意志を届ける「強力な武器」になります。

2. なぜVIがお客様に「選ばれる理由」になるのか
ここで、VIと一緒に語られることが多いデザイン経営、ブランディング、CIという言葉を整理しながら、なぜVIがお客様に「選ばれる理由」になるか を深掘りしていきます。
- デザイン経営:デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用し、企業の競争力を高める経営手法
- ブランディング:ブランド価値の向上を目的とし顧客との関係を構築する活動
- CI(コーポレート・アイデンティティ):MI、BI、VIで構成
- VI(ビジュアル・アイデンティティ):CIの構成要素であり、その活動を、お客様の目に映る「形」にしたもの
つまり、デザイン経営やブランディングで磨き上げた企業の価値を、VIという『目に見える印』にし一貫して届け続けることで、お客様の心の中に揺るぎない信頼が積み重なります。
それが他社には代えがたい決定的な『選ばれる理由』へと変わるのです。
2.1 脳は「言葉」よりも「色や形」を先に信じるから
人間の脳は、文字を読んで理屈で理解するよりも、形や色を直感的に受け取るスピードの方が圧倒的に速いと言われています(文字の約6万倍)。代表的な色や形について、一般的に感じるイメージは以下ではないでしょうか。
- 鮮やかな「オレンジ」:明るいエネルギー
- 穏やかな「ブルー」:知的な信頼感
- 柔らかな「丸み」:優しさや親しみやすさ
言葉で「私たちは誠実です」と何度も説明するよりも、その価値を体現したデザインをパッと見せるほうが、ずっと早く、深く、お客様の心に届きます。この「第一印象での直感的な納得感」こそが、数ある競合の中から御社が真っ先に候補に残り、最終的に「選ばれる理由」になります。
2.2 「一貫した見た目」が、プロとしての品質を保証するから
VIを整えるということは、経営者の強い想い(愛着)を、誰が見ても同じ印象を受ける「視覚的なルール」へと磨き上げることです。
お客様が「いつ、どこで御社を見ても同じ印象」を受けるとき、脳は無意識に「ここは細部まで徹底しているプロの会社だ」という確信を抱きます。逆に見た目がバラバラだと、どんなに良いサービスでも「仕事も雑なのでは?」という不安を与えてしまいます。「いつものあの色、あのロゴなら安心だ」という視覚的な一貫性は、お客様の迷いを消し、「ここなら間違いない」という確信を与える決定的な「選ばれる理由」になるのです。
3. ロゴ作成の本質:会社の「「シンボル」を作る
VIの重要性をわかりやすく説明するために、ここでは皆さんが普段から目にする機会の多い「ロゴ」を例に挙げて解説します。
3.1 ロゴは、みなさんの「物語」を映す鏡
ロゴは、第4回でお話しした「創業の想い」という魂(MI)のビジュアル化です。
- 「なぜ、この会社を立ち上げたのか?(Why)」
- 「お客様にどのような体験を届けたいのか?」
会社のロゴ作成のプロセスでは、ぜひみなさんの「物語」をたくさん思い出してください。物語が宿ったロゴは、単なるマークを越えて、社員が背筋を伸ばし、お客様が信頼を寄せる「会社のシンボル」へと進化します。
3.2 覚えやすさを生む「シンプルさ」
優れたロゴデザインは、単なる視覚的なシンボル以上の価値を持ちます。それは企業の顔、ブランドの精神を体現するものであり、遠くから一眼見ただけでも「あの会社だ!」と瞬時に認識できる識別性の高さが求められます。
この識別性を高め、人々の記憶に深く刻み込む鍵となるのが「シンプルさ」です。
複雑な要素を排除し、極限まで洗練されたデザインは、視覚的なノイズがなく、見る人にストレスを与えません。シンプルであればあるほど、その形状や色、構成が脳裏に残りやすく、長期にわたって人々の記憶に定着します。
このデザインにおける「引き算の美学」は、時代の流行に左右されない「不朽性」をもたらします。本質的な要素だけを残した普遍的なデザインは、何年、何十年経っても新鮮さを失いません。この持続性が、ロゴを単なるマークではなく、企業が長期にわたり使い続けられる「資産」へと昇華させます。
4. 【実践ワークシート】「らしさ」を形にするための第一歩
「VIを作りたいけれど、どこから手をつければいいかわからない……」
という経営者様のために、その第一歩として、直感的な回答がどのようなデザイン要素につながるのかを明示したワークシートをご用意しました。正解はありませんので、リラックスして取り組んでみてください。
4.1 VI 構築ワークシート
以下の4つのステップで、あなたの会社にぴったりの「見た目」のヒントを見つけてみましょう。
| 質問ステップ | この回答がどの「VI要素」に繋がるか |
|---|---|
| ①会社の性格は? (例:情熱的、誠実、アットホームなど) |
【コーポレートカラー(色)】に繋がります。 情熱的なら「赤」、誠実なら「青」などの基本色を定め、実際には微調整をしながら与えたい心理的効果を最大化できる色を決定します。 |
| ②会社の役割は? (例:守る盾、未来を照らす灯台、絆を結ぶ紐など) |
【ロゴマークのモチーフ(形)】に繋がります。 抽象的な「想い」を、具体的で覚えやすい「形」に変換するヒントになります。 |
| ③お客様への声かけは? (例:ハキハキ元気よく、穏やかに優しくなど) |
【フォント(書体)】に繋がります。 元気なら太い「ゴシック体」、穏やかなら繊細な「明朝体」など、文字の表情を決めます。 |
| ④提供したい空気感は? (例:伝統的で重厚、最新でシャープ、手作り感など) |
【イラスト・写真のトーン】に繋がります。 Webサイト全体の質感や、使用する素材の選び方を左右する世界観の土台です。 |
いかがでしたでしょうか。
このシートを埋めることで、バラバラになりがちだった視覚的なイメージに、御社の理念や強み(ブランドの核)に基づいた一本の太い筋が通ります。
5. 制作事例:VIで「らしさ」を形にした3つのロゴ
園と子どもたちへの想いをロゴに|八潮ちくみ幼稚園様

「ちくみ幼稚園」の園名は、創業者である"たけさん"のお名前に由来しています。たけさんには3人の娘さんがおり、三姉妹で力を合わせながら「大切な子どもたちがすくすく伸びるように育てていきたい」との想いが込められています。
竹はまっすぐに空へと向かって育ち、どれほど強く曲げられても折れることなく、元の姿へと戻る強靭さを持っています。園長先生は、この竹の特性に、園児たちの未来への願いを重ねられました。「"素直"で"あかるく"そして、"心を強く"成長していってほしい」このビジョンこそが、ちくみ幼稚園様のロゴマークに込められた、揺るぎない「想い」となっています。
完成したロゴマークは、「Chikumi」の文字そのものを「竹」と「笑顔」で表現。一目見ただけで、竹の力強さと子どもたちの笑顔が同時に伝わる、シンプルさの中に想いが凝縮されたデザインとなりました。
| VI要素 | 選定理由 |
|---|---|
| モチーフ | 竹・笑顔 |
| コーポレートカラー | みどり色(竹の生命力と爽やかさを表現) |
| デザイン方針 | 「Chikumi」の文字そのものを「竹」と「笑顔」で形作る |
| トーン | ナチュラル、誠実、やさしさ、感謝する心 |
歴史ある農園の新しいシンボル|中村園様

横浜市緑区で長年愛されてきた浜なし・浜ぶどう農園、中村園様。これまで正式なロゴを持たず、地域のお客様との信頼関係を大切に営んでこられました。
ECサイト開設を機に「中村園らしさ」を形にし、既存のお客様はもちろん、Web検索から訪れる若い世代にも魅力が伝わるブランドの軸を築くことが目的でした。
実際に農園へ伺い、栽培への想いを伺う中で浮かび上がったテーマは「土から果実、そして未来へ」。
完成したロゴは、浜なしの丸い形状を活かし、中央から顔を出す「太陽」で未来への発展を、横に広がる「木々」で人々のつながりを、土台の「土」で長年の努力の積み重ねを表現しました。歴史と信頼、そして未来を一つのシンボルに結晶化させたデザインです。
| VI要素 | 選定理由 |
|---|---|
| モチーフ | 太陽・木々・土・浜なしの丸い形状 |
| デザインテーマ | 「土から果実、そして未来へ」 |
| デザイン方針 | シンプルかつ可愛らしく、親しみやすい印象 |
| トーン | 自然、信頼、歴史、未来への発展 |
新たな門出を支えるロゴマーク|すぎやま税務・労務事務所様

独立開業という節目に、事務所の顔となるロゴマークが必要とされていました。ご要望は「信頼」「堅実」「繋がり」をシンプルかつ骨太に表現すること。
完成したデザインは、「五角形」(感受性・安全・サポート)と「六角形」(信頼性・堅実性・合理性)を組み合わせ、「繋がり、支え合い=安心感」を視覚化しました。
同時に事務所名の頭文字「S」も自然に浮かび上がります。オレンジと青緑の2色が、専門家としての信頼感と親しみやすさの絶妙なバランスを生み出しています。
| VI要素 | 選定理由 |
|---|---|
| モチーフ | 事務所名の頭文字「S」・五角形・六角形 |
| コーポレートカラー | オレンジ(前向きなエネルギー・あたたかさ) 青緑(落ち着き・安心感・包容力) |
| デザイン方針 | シンプルで骨太、安心感と信頼感を与える |
| トーン | 信頼、堅実、繋がり |
6. まとめ:形にすることで、想いは一生モノの「資産」になる
6.1 VI. 築き上げるブランドという名の「信頼資産」
「VI(ビジュアル・アイデンティティ)構築」を整えるプロセスは、一見すると時間と労力を要する手間に感じるかもしれません。しかし、これは単なるデザインの統一に留まらず、企業の根幹を成す「信頼」を一つ一つ積み上げ、確かな形にするための極めて戦略的な投資です。
御社の事業理念や目指す未来、そして大切にする価値観が、視覚的な要素として結晶化した「これこそが我が社だ!」と胸を張れる形ができあがれば、そのVIは強力な資産となります。
それは、みなさんが直接語りかけなくても、何年、何十年と、顧客、取引先、そして社会に対して、一貫性のあるメッセージを発信し続けてくれます。みなさんに代わって「信頼」を証明し続け、積み上げてくれるのです。この「蓄積されたブランドの価値」こそが、企業を永続させるための揺るぎない土台となります。
6.2 「選ばれる理由」のデザイン
私たちカズミアは、企業様がこれまで大切に育んできた想い、そしてこれから実現したい未来への熱意といった「まだ目に見えない価値」をデザインの力で鮮やかに「視覚化」し、お客様の心に届く形に整えます。
市場に溢れる競合の中から、お客様が御社を迷わず「選ぶ理由」となる、説得力と魅力に満ちたビジュアル・アイデンティティを形にすることこそが、私たちの使命です。
まずはお聞かせください、御社の「ものがたり」を。
ブランドを形作る最初の一歩は、深い対話から始まると私たちは考えます。
まずは、創業の背景、乗り越えてきた課題、未来への夢、そして何よりもお客様に提供したい「特別な価値」といった、みなさんの熱い「ものがたり」を私たちにぜひお聞かせください。
世界に二つとない、御社の理念と情熱が凝縮されたVIこそが、御社の飛躍を支える、揺るぎない土台となるはずです。
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ブランディング全般に関連する内容はもちろん、今回の記事でお伝えしたVIに関するお悩みをお持ちの経営者さまはぜひ、私たちカズミアにご相談ください。初回相談は無料です。ぜひお気軽にご相談ください。
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第3回:「ウチには何もない」なんてことはありません。地域の中小企業が「憧れのブランド」に変わった3つの物語
第4回:CI(コーポレート・アイデンティティ)とは?企業ブランドを強化する戦略
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第6回:会社の「らしさ」を形にする。視覚的に想いを伝える、VIの作り方








